彷徨う私は闇夜の花に囚われて
ちょうど教室に辿り着いた黒瀬樹へと鋭い視線を向けるすみれちゃん。
せっかくの可愛い顔が台無しになっている。
「す、すみれちゃん?そろそろ先生が来るんじゃないかな。席に戻ろう?」
制服の袖口をつんと摘まみ、控えめに笑みを浮かべる。
私が笑えばすみれちゃんも笑顔になってくれるのを私は知っているから。
「あ、うん。そうする!」
ぱっと花が満開に咲くような笑い方はいつも通りのすみれちゃんで。
さっきまでの形相は見間違いなのかと思うほどの変わりよう。
すみれちゃんにとって、友達である私の元カレの存在というのはとっても憎いものみたい。
昔はここまでじゃなかったんだけどな……。
やっぱり、私が泣いちゃったからここまであからさまに敵視しているのかな。
私よりも怒ってくれるすみれちゃんのおかげで、私はあの日以来涙を流すことはなかった。
ちょっとしたトラウマみたいなものが残って、男の子と関わるのが苦手になった節はあるけれど。
私は今日も心豊かに生きて、明るく笑えている。