彷徨う私は闇夜の花に囚われて



でも、本心と表情は前向きにはなれない。


薄々と紅バラくんから敵意は感じていたから、紅バラくんのましろへの好意は丸わかりだったけど。


まさか二人が両想いだったなんて思いもしなかった。


だって彼女は男の子が苦手だって言ってたんだもん。


紅バラくんが告白したところで、秒で振られてしまうんだろうなって思ってた。


『そっか……付き合っちゃったか』


という切なさをなんとか飲み込んだけど、表情は取り繕えず。


やりきれない想い、消化しきれない想いがもどかしくてたまらない。



『初めまして、雑談の配信をしているましろです』



真っ先に惹かれたのは彼女の声だった。


暇つぶしにいろんな配信を巡回していた僕。


柔らかく鼓膜を揺らし、ほのかな甘さが舌に伝わってくるような声色で。


配信開始の通知が来る度に無意識にそれをタップして、彼女が作る世界へ吸い込まれた。


< 100 / 204 >

この作品をシェア

pagetop