彷徨う私は闇夜の花に囚われて
誰かのアカウント
「美紅ちゃんおはようこれ見て!!」
週が明けて登校した月曜日の朝。
早朝の人がいない昇降口にて、私はすみれちゃんに捕まった。
私の顔を見た途端に一息でセリフを吐き、私の目の前にスマホの画面を押し付けるすみれちゃんはかなり強引で。
先日の気まずさがないみたいな行動に私は戸惑いを覚える。
ただ、目を開いているから視覚はちゃんと機能していたから、
「“パンジー”……?」
スマホに誰かのアカウントのプロフィールが表示されているのがわかった。
真っ黒なアイコンと文章のない自己紹介欄。
可愛らしい名前に反した殺風景なそれに不気味さを感じる。
それに、私にはパンジーさんとやらに心当たりはないし、すみれちゃんがなんでこれを見せるのかもわからなくて……。
……嫌な気配が私のすぐ近くまで迫っている気がした。
「これは裏垢って言って、メインで使っているアカウントとは別の……サブのアカウントみたいなもの!ほら、サブだから自己紹介文もないし、鍵をかけて特定の人にしか見られないようになってるでしょ?」