彷徨う私は闇夜の花に囚われて



特定の人にしか見られない。


その言葉が私の記憶に引っかかって。


『このアプリには自分が許可した人以外には自分の呟きを見られないようにできる機能があってね』


以前、ツバキくんが電話で丁寧に教えてくれたのを思い出した。


いつの間にか返信マークの横に数字がつかなくなっていたから、私に飽きてどこかへ行ったんだって安心してすっかり忘れていたけれど。


かなり印象深い話だったせいか、あのときの悲しい感情がすぐに呼び起こされる。


だけど……。


「これ、紅バラさんのだよ!」


紅バラさんの名前がすみれちゃんから発せられたことで……切ない感情が消え去った。


すみれちゃんが紅バラさんについて触れるときにいい話だった試しがない。


また悪口を言うつもりなんだって、悲しみを通り越して呆れてしまったの……。


興奮気味のすみれちゃんは、私の曇った顔には気づかずに話を続ける。


「美紅ちゃん、前に見えない返信があるって言ってたでしょ?あの犯人はこのアカウントだったんだよ!ほら、こうやって呟きを遡っていくと……ほら!」


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