彷徨う私は闇夜の花に囚われて



「―――別れない」



「え?」

「別れないよ」

「な、なんで……」


なんで?逆になんで?


私がすみれちゃんの思い通りになると思った理由を教えて欲しい。


私は決めたの。幸せになるって。


だから、自分から幸せな日常を手放すわけがないんだよ。


それに、そもそもの話なのだけれど……。


「これが紅バラさんだって確証はどこにもないよね?」

「そ、れは、そうだけど……でも!」

「でももなにもないよ。私のファンの中には特定して会いに来るような、過激な人だっているんだよ?こういうことをしててもおかしくないでしょ?」

「……そ、うだね」


渋々という風に頷くすみれちゃん。


私が告げる事実に反論の余地はない。


スマホを貸してもらってアカウントの呟きを見返してみても、紅バラさんだと決定づけるものは見当たらなくて。


()いて挙げるなら『ずっと一緒にいようね。約束だよ』は、日付が付き合った翌日になっていて、付き合いたての彼氏の呟きにも見えるけども。


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