彷徨う私は闇夜の花に囚われて
……だけど、身体が動かない。
すみれちゃんの中にあった友情ではない感情を認めたくなくて、現実を受け止めきれないんだ。
「やめっ……」
避けることも逃げることもできず、反射的にぎゅっと目を固く閉じたとき―――
「―――嫌がってる」
暴走するすみれちゃんの腕を強く掴んで止めてくれたのは、
「い、つきくん……?」
春の夜に拒絶してからは視線すらも交わらなかった元カレで。
すみれちゃんを引いたことで私たちの間にできた隙間に強引に割って入り、私を背に隠した。
中学のときよりも大きくなった背中はたくましくて、すみれちゃんの狂気から逃れた私は力が抜けそうになる。
「ちっ。どいつもこいつも邪魔ばっかり……!あんたはただの“元”カレなだけで今は関係ないでしょ!?」
思ったように事が進まなくて癇癪を起こすすみれちゃん。
その様子は欲しいおもちゃを買ってもらえない子どもさながらで。