彷徨う私は闇夜の花に囚われて
『―――俺たち、付き合う?』
1年と少し前、蝉が私たちの会話を妨害していたあの頃も、樹くんは同じ目をしていた。
こちらの真意を探るような瞳。
漆黒の瞳から感情を読み取るなんて私にはできない。
樹くんはなにを考えているの?
どうして今もそんな目で見てくるの?
こうして何度も目が合うのは、偶然なの……?
今は友達ですらない、“元”彼氏と彼女。
元がつく前ですら私に興味もなかったのに。
そんな樹くんのことを、どうしたら私がわかるっていうんだろう。
……って、こんなの良くない。
樹くんのことを考えないようにするってさっき宣言したばかりだもん。
目が合うくらいで動揺してどうするの。
別れてからもう半年以上経つんだから、いい加減しっかりしないと。
見えない引力を払うように私はそっと目を伏せ。
いまだに私へと突き刺さる強い視線に気づかないふりをした。