彷徨う私は闇夜の花に囚われて



目をごしごしと擦り、気合でぱちっと目を大きく開くと。


「おはよう、ましろ」


タイミングよく投げられた挨拶。


心なしか紅バラさんの声もいつもよりほんの少し高い気がする。


「……おはよう、ございます」

「ふふっ、なんか照れるね」

「はい、なんとなく恥ずかしいです……」


くすぐったい空気が流れて、あっさりと二人だけの甘ったるい世界に引き戻される。


朝からこんなに幸せで大丈夫なの……?


もうそろそろ大きな不幸がどかんと降ってきたりするのかな……?


なんて、無駄にネガティブになってみたり。


「ましろの眠たそうな声を聞けて、誰よりも早く会話ができるとか……幸せ過ぎてどうにかなりそう」


なるべく感情を爆発させないように……でも抑えきれずだだ漏れの幸せオーラに、ネガティブな思考はどこかへ飛んで行ってしまった。


時間の許す限り、この甘々な空気に包まれていたい。


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