彷徨う私は闇夜の花に囚われて
右下に視線を落としていると、机の上にいるスマホが私を呼ぶ。
なんとなくいつもよりも重いスマホを手に取り画面を開くと、予想通り返信が来ていて。
『そう。紅バラが牽制してきた』
決定的な言葉と一緒に、1つの画像が添付される。
それは紛れもない証拠。
この人のメインのアカウントと紅バラさんがやり取りをしている画面だった。
『ましろのことが好きなんですか?』
『声可愛いし、性格よさそうだし、好きですけどなにか』
紅バラさんが突撃したことで始まった会話。
……この人も開き直るところがしたたかだと思う。
苦笑いを浮かべたとき、次の文章が目に入り表情が固まった。
『ましろはとっくに俺のものなので、好きになっても無駄ですよ。早急に諦めて失せてください』
一見、丁寧な口調に見えるけど、実際は棘しかない文。
この前通話したときに見えてしまった紅バラさんの静かな激情がこの文からも伝わってきて、間違いなく紅バラさんなんだって確信せざるを得なかった。