彷徨う私は闇夜の花に囚われて
『このことをましろに話したら、そのときは遠慮なく制裁させてもらうので……そこのところ、よろしくお願いしますね』
私はいよいよ、力が入らなくなった手からスマホを落としてしまった。
こんなの知らなければ私は幸せだったのにって。
密告者への見当違いな恨みを抱きそうになった私がいた。
なにもかもが最悪になった私は、結局勉強なんか手につかなくて。
外ではまだ日がカンカンと照りつける中で布団にくるまる。
せっかく手に入れた幸せが足元から崩れていく現実から少しでも離れたかった。
◇ ◇ ◇
ゆーらゆら。とぼとぼ。
ゆらゆーら。とぼ、とぼ。
ゆらゆら。とぼ、とぼとぼとぼ。
世界は薄暗く、足元も見えないほど。
そんな見慣れない世界で横に不規則に揺れながら、これもまた不規則なリズムで私の方へ近づいてくるひと際黒い影。
不気味さがひしひしと伝わってくるそれに、私は今すぐにでも駆け出したいのに……身体は金縛りにあっているみたいに指先すらも動かせず。
ただ棒立ちになり、闇みたいな影がやって来るのを待っている。