彷徨う私は闇夜の花に囚われて



やがて、私たちの間には誰も通れないほどに距離を埋められたとき。


脳みそに繋がる神経は私の指令を無視するのに、涙腺だけは望んでいなくても仕事をしてくれて。


『なんで泣いてるの?私に会えて嬉しいから?』

『そんなわけ……』

『私も嬉しい!美紅ちゃん大好き!』


すみれちゃんの形になった人影が、私の頬を伝う雫を吸い取るようにキスをする。


満足したのか、髪の毛がぼさぼさでも可愛く見える満面の笑みを浮かべた。


自分勝手なすみれちゃんに苛立ちを覚え、動かないとわかっていてもどうしても距離を取りたいと反射的に振り払おうとした。


と、その瞬間、身体が急に解放される。


身体の自由を取り戻した私はすみれちゃんを突き飛ばし、回れ右のあとに猛ダッシュした。


通知表の評価が唯一3の体育。


走るのは苦手だけど、それでも逃げたくて仕方がなくて。


脇目も振らずに地面を蹴り続けた。


走って走って、ヘロヘロになって。それでも足を止めないで。


随分と長いこと走って。


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