彷徨う私は闇夜の花に囚われて
『―――ましろ、おいで』
こちらに差し出される大きな手。
逆光で顔は見えない。
高くなったり低くなったり、安定しない……でも大好きなはずの声。
『あなたは私の味方……?』
『当たり前』
誰なのかわからない。
考えようとしても頭の中に靄がかかったみたいに邪魔される。
他に選択肢がない私は怯えつつも手のひらを重ねた。
温かな手に包み込まれ、力強く引っ張られる。
それから彼の腕の中にすっぽりと隠されてしまい……。
『美紅ちゃんを放せ!!』
『『『ましろちゃんを返せ!!!』
追いついた集団が声を揃えてこちらに向かって吠えた。
声に圧倒されて慄く私はわかりやすく身体を震わせてしまう。
大丈夫だよとでも言っているかのように片方の手で頭を撫でる彼は、当然それらに屈することはなく、
『ましろは誰にも渡さない』
鋼の意思で静かに断った。