彷徨う私は闇夜の花に囚われて
私を包み込んでくれる彼に安心感を覚える私だったけれど……。
『ねぇ、ましろ……』
突然、低くなった声が私の心を凍りつかせる。
大好きだけど怖い声。
時折、重い愛を吐き出す声。
この人は……誰だっけ?
思い出さなくちゃいけない。
この人が誰なのかわかっていなきゃいけない。
確かめるために私がそろそろと顔を見上げると、そこには。
『―――美紅……絶対に逃がさないよ』
あぁ……そっか。あなたは私の――――。
重く囁かれた言葉と身体を捕らえる腕の強さが愛おしくて……それでいてとても怖くて。
私は彼の腕の中から逃げてしまいたいと、強く願ってしまった。
◇ ◇ ◇
「……っ!はっ、はっ……はぁ……」
ばちっと目を最大まで開くと、視界に広がるクリーム色の天井。
頭はやわらかな枕に深く沈み、身体は薄い掛け布団に包まれている。
寝汗か冷や汗かよくわからない水滴が額にぽつぽつと浮かび、重たい髪の毛がぴったりと貼りついているのがわかった。