彷徨う私は闇夜の花に囚われて



ベッドの上で体操座りをする。丸くなる。


スマホを膝の上に乗せる。眺める。


画面をトントンと指先でつつく。考える。


ぐらりぐらり。


揺れているのは。バランスを取ろうとしているのは、スマホだけじゃない。


ぐらりぐらりぐらり。


……大きく傾く。


「あっ」


ベッドの上に落ちるから大丈夫だったはずだけど、とっさに伸ばした手は見事にスマホを掴んでいて。


そして、不運に不運が重なってしまった。


画面唯一の白い部分に指が触れているのを見て、ため息が漏れる。


「押しちゃったよ……」


覚悟も決まっていない内に、事故で押してしまったリクエストボタン。


自分の声に後悔の念が色濃く浮かぶ。


『リクエストを送信中です』


送信を取り消すという選択も頭をよぎったけれど、もう既に通知は相手へ行っているはずだから。


“ましろがパンジーにリクエストを送った”事実は消えない。


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