彷徨う私は闇夜の花に囚われて
紅バラさんにとっては寝ているはずの私。
言葉が届かないはずの私に、紅バラさんは当たり前のように話しかける。
……いつも、こうして私が気づかなかっただけだったのかな。
画面越しに毒を吐く、怖い紅バラさんがいて。
私に聞こえないとわかっていても愛を吐く、少し変な紅バラさんがいて。
夢を見ていた私は、夢とは違う現実がなかなか見えていなかった。
それどころか、必死になって現実を否定して自分に理想を言い聞かせていたから。
……なんだかすごく、馬鹿みたいだ。
「ほんとの俺は醜くて、ましろにはふさわしくないろくでもないやつだけど……どうか離れていかないで」
切実でいて、不安そうに震える声。
私が自分のことを嫌いなように、紅バラさんも自分の悪いところを自覚して自信がないんだってわかった。
だけど、ただわかっただけで。
寄り添って包み込んであげることは、私にはできない。
せいぜい仲間意識みたいなものが芽生えるくらいで。
でも、それはもう特別で愛おしい感情とは別のものになっちゃう。