彷徨う私は闇夜の花に囚われて



パンジーさんの正体が紅バラさんだとしても、そうじゃなくても。


なにも知らなかった頃には戻れないの……。


『願いを叶えてあげられなくて、ごめんなさい』


心の中で、無情な本音を返す。


しとしとと泣き疲れて眠るまでの間。


罪悪感を纏った涙が、枕を濡らし続けた。


翌日、目を覚ますと珍しく雨が降っていて……神様も悲しいことがあったのかもしれない。


神様が大泣きしてくれたおかげで、もう私の目から雫が零れ落ちることはなかった。



◇ ◇ ◇



時間をかけて覚悟を決めた一週間後の夜。


「―――紅バラさん、別れましょうか」


私は開口一番に別れを切り出した。


不意打ちに驚いたらしい紅バラさんは固まり、しばらくの間、沈黙が広がる。


たっぷり30秒が経ったとき、身じろぎをする音が聞こえて私はどんな言葉が返ってくるのかと身構えた。


真っ先に想像したのはすみれちゃんと同じように怒りを浴びせられること。


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