彷徨う私は闇夜の花に囚われて



「顔色悪い。今すぐ寝て」


額を指先でトンと押さえつけられる。


さすが樹くん。人が簡単に動けなくなる方法をよくわかってる。


まぁ、押さえつけられなかったとしても、動き上がる気力はないんだけど……。


「眠れてないだけだよ。すぐに良くなると思うし」


にへら、と無理やり笑みを作ると、樹くんはもっと顔をしかめた。


樹くんがそんな顔をする理由はどこにもないはずなのに、なんで機嫌が悪いの?


あ、笑顔が不細工だったから不愉快な思いをしたのかもしれない。


悪いことをしちゃったな……。


「ごめんなさい」

「……なんで謝るの?」

「え、嫌な思いをさせちゃったかなって」

「全然。それよりも眠れてない?なんで?」


私の謝罪を軽く流し、不眠の理由を真剣な表情で聞いてくる樹くん。


苦手だった黒く光る瞳を、今は真っ直ぐに見返せる。


「最近、同じ悪夢を毎日見るから」

「へぇ。なにか心当たりはないの……?」


< 177 / 204 >

この作品をシェア

pagetop