彷徨う私は闇夜の花に囚われて
「顔色悪い。今すぐ寝て」
額を指先でトンと押さえつけられる。
さすが樹くん。人が簡単に動けなくなる方法をよくわかってる。
まぁ、押さえつけられなかったとしても、動き上がる気力はないんだけど……。
「眠れてないだけだよ。すぐに良くなると思うし」
にへら、と無理やり笑みを作ると、樹くんはもっと顔をしかめた。
樹くんがそんな顔をする理由はどこにもないはずなのに、なんで機嫌が悪いの?
あ、笑顔が不細工だったから不愉快な思いをしたのかもしれない。
悪いことをしちゃったな……。
「ごめんなさい」
「……なんで謝るの?」
「え、嫌な思いをさせちゃったかなって」
「全然。それよりも眠れてない?なんで?」
私の謝罪を軽く流し、不眠の理由を真剣な表情で聞いてくる樹くん。
苦手だった黒く光る瞳を、今は真っ直ぐに見返せる。
「最近、同じ悪夢を毎日見るから」
「へぇ。なにか心当たりはないの……?」