彷徨う私は闇夜の花に囚われて



小首を傾げてこちらの様子を伺う樹くんに、私は驚きを隠せない。


昔は私に深入りする素振りなんて1ミリもなかったから。


向こうから話しかけられることも会話が2往復以上続くのも、あんまり記憶になくて。


樹くんは成長したんだ……と、軽く感動を覚えるほど。


いい意味で変わった樹くんに気が緩み。


気づけば私の口は悩みを包み隠さずに吐き出していた。


ネットで雑談配信をやっていること。


特定された話から炎上した話まで。


紅バラさんという彼氏。


紅バラさんのサブアカウントらしきパンジーさんのアカウント。


すみれちゃんや紅バラさんへの憤りや愛おしかった気持ちも、全部。


樹くんは枕元に腰かけて、じっくり私の話を聞いてくれた。


考え込むように腕を組み、ときどき、右手の人差し指でこめかみをとんとんと叩く。


相変わらずなにを考えているのかはさっぱりわからないけれど、真剣に耳を傾けてくれているその姿が嬉しくて、心強くて。


私の心に柔らかな(ともしび)が生まれたのを感じる。


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