彷徨う私は闇夜の花に囚われて



たったこれだけのことで活力が湧いてくるって……私はどれだけ人に飢えていたんだろうね。


樹くんはしばらく落としていた視線を私に合わせ、それからゆっくり言い聞かせるように言葉をくれた。


「悪いのは周りの人たち。美紅はなにも気に病まなくていい」


ぽんぽんと。ほどよい重みで私の頭を撫でる。


励ますために選んでくれた言葉と宥める仕草。


それらは私の深刻な心の病を治してくれているみたいで……。


涙が滲み出そうになったとき、樹くんが大きな左手で私の目を覆った。


急に襲ってきた闇に、落ち着いた心が再び不安定になる。


「な、なに。真っ暗になって……」

「起きたらまた話そう。今は寝て」


力が入らないまま抵抗しようとする私に、有無を言わさない態度の樹くん。


それでも『起きたら話そう』って約束をしてくれたから。


私の右手に自分の右手を重ねて元気を分けてくれるから。


目を覚ましても樹くんは傍にいたままだという安心感に気が抜けて、大きな睡魔が襲ってきた。


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