彷徨う私は闇夜の花に囚われて
「おやすみ。いい夢を」
最後に降ってきた優しい声は、誰かによく似ているなって思ったけれど。
緑の集まりに光の雨が差し込んでいるのが見えたから、私は考えることをやめて。
自然のエネルギーが満ちた安らぎの場所に、喜んで飛び込んだ。
◇ ◇ ◇
『いい夢見られた?』
ぐっすり眠って目を開けると、真っ先に樹くんの整った顔がドアップで映り込んできて。
びっくりしたのと顔がいいのとで、私の心臓が暴れ出した。
それなのに、樹くんは私の心の中なんておかまいなしで。
『うん。クマが薄くなってる。良かった』
左手の親指で目の下を丁寧になぞるから、目元も心もくすぐったかった。
それから、繋がれたままの温もりに気づいて安心していると、くぅぅぅとお腹が小さく鳴いて。
恥ずかしさで頬に熱が集中するのを感じたとき、樹くんは口元を左手で覆い隠しながら私を誘った。