彷徨う私は闇夜の花に囚われて
『ご飯を食べに行こうか……ふっ』
……笑い、堪えきれてないよ。樹くん。
むぅっと唇を尖らせた私だったけれど、私を支えるために手を差し出す樹くんからは底なしの優しさを感じたから。
『ありがとう』
変な顔はやめて、笑顔を向けた。
そして私は、繋がる両手の力強さに頼らせてもらうことにしたんだ。
夜の気配が色濃い空を眺めながら、保健室での出来事を思い返していると。
「―――おかゆでいい?」
メニューをぱらぱらとめくっていた樹くんが私に問いかけた。
一瞬、頭の中で胃と相談をして……それがベストだと判断した私は、樹くんに伝わるように頷く。
なにを食べるか決めていたらしい樹くんは店員さんを呼んで私の分までスマートに注文してくれた。
……さすが、おモテになる男子はそこら辺が上手ですね。
店員さんが去っていた後に拍手を送ると、不思議そうな顔でこちらを見つめてきた。
私はふいーっとその視線から逃げ、メニューへと落ち着かせる。