彷徨う私は闇夜の花に囚われて



樹くんが“この”と差す、呟きを見つめる。


見つめながら記憶を辿って……。


私は樹くんが言っている意味をようやく理解した。


「……ってことは」

「うん。実際に見た人にしかわからないから」


足元から背中まで。


大きな寒気が下から一気に駆け上がってきた。


全身を震わせ始めた私。


樹くんが隣に来て背中をさすってくれる。


樹くんから温もりを与えられてもなお、震えは治まらなくて。


思考までもが乱れそうになる。


……でも、一番大事なところだから、止まりそうになる思考をなんとか巡らせて。


樹くんが指で示した呟きに、もう一度目を向けた。


『一目惚れした文房具を衝動買いしてしまったのですが、学校で使ってみるととても使いやすくて最高でした○』


今年の4月頃の私の呟き。


それに対する、


『新しいペンを買ってテンション上がってたのが可愛すぎる……』


というパンジーさんの呟き。


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