彷徨う私は闇夜の花に囚われて
美紅の周りをうろつく鬱陶しい虫を追い払えて満足だった俺。
まさか『別にいいけど』までを美紅に聞かれてて、振られて。
なおかつ、トラウマを与えてしまっていたなんて。
美紅から真実を聞いたときは衝動的に自分の胸にはさみを突き立てそうになった。
……通話中に相手がいきなり自殺する方が質の悪いトラウマになりかねないからギリギリのところで思い留まったけど、なんにせよ立ち聞きのタイミングが悪すぎる。
せめて『できるものなら』まで聞いて欲しかったな。
そのあとは彼の耳元で低い声で囁いたから、教室の外までは聞こえなかっただろうし……。
……まぁ、大人しく腕の中で俺にもたれかかってる可愛い美紅に免じて、過去のことを恨むのはここまでにしておく。
「……樹くん」
しばらく腕の中に閉じ込めた愛おしさの余韻に浸っていると、もぞもぞと美紅が顔を上げた。
下からこちらを見上げる様子が愛らしい。
「すごく今更なことを聞いてもいい……?」
「なに?」
「中学生のとき、ちゃんと私のこと好きだった?」