彷徨う私は闇夜の花に囚われて



いつもなら得体の知れない飴なんか絶対に口にしないのに、悪意なんか微塵もこもってなさそうな控えめで綺麗な字だったから。


それらしい人がいないか、辺りを見回しながらそれを口に放り込んだ。


清涼感と甘さが喉を癒して、痛みが和らぐ。


残念ながらそのときは見つからなかったけど、運命の再会は学校の廊下で起きて。


『あれ、すみれちゃん。声がガラガラだね』

『そうなんだよ~!乾燥なのか風邪なのかイマイチよくわかんない……』

『それは大変だ……効くかわからないけど、のど飴あげるね。痛みが和らぎますように』

『え、美紅ちゃん天使なの?手を組んでお祈りって可愛すぎない?』


隣のクラスだった美紅が、移動教室の途中に廊下でそんなやりとりをしているのを偶然に見かけた。


草野と同じ思考なのは(しゃく)だけど、天使がいるって本当に思ったんだ。


ちなみに、美紅は頭が良く、優しく、可愛いことで有名だというのは後から知ったことで。


高嶺の花の存在は当然競争率が高くて、焦りが募ったのを思い出す。


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