彷徨う私は闇夜の花に囚われて
あれから時間が経ってかなり遅くなったけど。あのときの感謝を、今。
差し出されたのど飴を受け取りながら伝える。
「飴、ありがとう」
「どういたしまして。あ、ここはお店の中だから外に出てから食べてね」
「うん、わかった」
いい意味で真面目な美紅。
隣の席になれたときも。
日課のランニングで美紅の家の前を通るときも。
図書館や喫茶店で姿を見かけるときも。
わかりやすくまとめられた暗記物のノート。頻繁に変わる理数系のノート。
すぐになくなる赤ペンのインクやシャープペンシルの替え芯。
辺りが闇に包まれた中でぼんやりと明るい美紅の部屋。
目で追えば追うほど、努力家である証拠ばかりを見つけた。
あんまり頑張りすぎるのも心配だから、ほどほどにしてほしい気持ちがないこともない。
そんな思いも込めて、さらさらの髪を纏う目の前の小さな頭を労うように撫でた。