彷徨う私は闇夜の花に囚われて
「わ、私、お花を摘みに行ってくる……!」
「行ってらっしゃい」
顔を赤くして俺の腕から飛び出す美紅。
頭を撫でるだけで俺に伝わるほどに心臓を早めるところがまた愛おしい。
咄嗟に掴んでしまいたくなるのをぐっと堪えて、代わりに店員さんを呼んだ。
「会計をお願いします。ちょうどあります。レシートは要りません」
「お預かりいたします。……はい、確かにちょうどいただきました。ありがとうございました」
店員の言葉を聞くのもそこそこに、美紅を待つ間、昔のことを思い起こす。
『———俺たち、付き合う?』
周囲の揶揄いに調子に乗って告白した。
『嫌?』
こういう言い方をしたら優しい美紅は俺のことを好きじゃなくても断らないだろうって思ってやった。
『謝らなくていいのに……』
唇同士が触れそうになったとき、直前で我に返ったのに美紅がそんな可愛い言葉を漏らすから。
まぶたへそっとキスを落とした。
強い憧れ、本気の想いを抑えられなかった。