彷徨う私は闇夜の花に囚われて
男の人はそれを機に脱兎のごとく逃げ出し、こちらを振り返らずに駅の方面へ向かっていった。
すみれちゃんはその小さくなっていく背中を満足そうに眺め、それからハツラツとした笑みを私に向けた。
「そうだね。せっかくの美紅ちゃんとのデートの時間をこれ以上失くすわけにはいかないもんね。よし!美味しいものを食べに行こ!!」
「……やっぱりデザートも食べようかな」
疲れたときには甘いものが一番。
美味しいスイーツに癒してもらおうかな。
配信のネタにもなって一石二鳥だ。
「だったら私も食べる!2種類頼んで二人でシェアしよう?」
にこにこと人懐っこい笑みを向けるすみれちゃんは先程の闇を微塵も感じさせないくらいに穏やかで。
さっきのことはお互いのためにもなかったことにしてしまおうと。
「それいいね、楽しみ」
「ふふっ、私も楽しみ~!!」
……スカートのポケットの不自然な膨らみから、無理やり目を背けたのだった。