彷徨う私は闇夜の花に囚われて
1.花に囲まれる
配信者
『美紅ちゃん~
今日も全力待機中!頑張ってね!』
軽快な着信音と共に表示されるメッセージ。
私はそれに可愛いスタンプを返して別のアプリを開いた。
神代美紅。
周りからそこそこ褒められる私の名前。自分でも綺麗な名前だなって思っている。
そんな私にはもう一つ名前がある。
「みなさんこんばんは。初見の方は初めまして。雑談の配信をやっている“ましろ”です。よろしくお願いします」
夜の9時。ベッドに潜り込む1時間前。
小さな端末に向かっていつもの挨拶と共にぺこりと頭を下げた。
向こうに届いているのは声だけで姿は見えていないけれど、いつもなんとなくそうしてしまう。
『ましろちゃん、今日もお疲れ様!』
コメント欄には似たような労いの言葉たちが多く並べられていく。
そこの中にある“ましろ”というのはネットの中での私の名前。