彷徨う私は闇夜の花に囚われて
校舎に入る直前。
群衆にちらりと目を向けてみると、背が小さく童顔の男の子と視線がかち合って。
「……っ!!」
二重のくっきりした目が大きく開かれた。
ど、どうしたんだろう?
まさか私の方と目が合うとは思ってなかった、って感じかな?
振り返ったのが私ですみません!って謝りたくなったけど、すみれちゃんに手を引かれたままの私は立ち止まることができず。
前に向き直った後も、穴が開くかと思うほどの強い視線を感じたから。
私は心の中で何度も謝罪を繰り返し、ついに昇降口へと身を隠した。
◇ ◇ ◇
それからワックスの匂いを微かに感じる教室へ入り、会えなかった分の会話を楽しんでいると。
「美紅ちゃん、クマができてるよ」
私の顔を凝視していたすみれちゃんは眉間にしわを寄せて、私の目の下に人差し指を突き付けた。
つい数秒前までのテンションとは大違いで、私は委縮してしまう。
険しい顔をしたまますみれちゃんは言葉を続けた。