彷徨う私は闇夜の花に囚われて
「結局、男が好きなんじゃん!私よりそっちを選ぶなんて、美紅ちゃんはおかしいよ!会ったこともない女の子に優しいって、なにか変なこと考えてるに決まって―――」
「―――やめてよっ!」
爆発して早口になったすみれちゃんの口を、私は両手で強く押さえた。
仲良しで有名な私たちが激しく言い合う姿は珍しいらしく、今度は大きなざわめきが起こる。
廊下からも視線が飛んできて……そこにある視線という視線全てを浴びているのもわかった。
それでも、私は……
「たとえすみれちゃんであっても2人を悪く言うのは許さないよ」
大好きなすみれちゃんに大好きな人たちのことを悪く言ってほしくない。
どうしても我慢ならないことなの。
私らしくない行動にすみれちゃんは抵抗もせずに呆然と見つめ、やがてふいっと顔を逸らした。
最後に見えたすみれちゃんの表情は今までにないくらい深く傷つき絶望感に満ちていて。
私まで心臓がつきりと痛んだけど、なにを言えばいいかわからなくて黙って背中を見つめた。
始業式が行われる体育館への移動も一人ぼっちで。
……心の半分がなくなったみたいな喪失感に襲われた。