彷徨う私は闇夜の花に囚われて
「こっちこそごめんなさい。勝手にドキドキしちゃうとか、自分キモいですよね」
「そんなことないと思うよ。だって、年上相手に緊張するのは普通だもん」
「……へ?」
「ん?」
ぽかんと口を開け、気が抜けたようにこちらを見つめる後輩くん。
私が珍しいものだと言わんばかりの強い視線に私は戸惑う。
……私、なにか変なことを言ったかな?
「先輩、天然ってよく言われませんか?」
「……言われるかも」
「ですよね」
納得したように頷く後輩くんはくすっと小さく笑った。
天然。ふわふわほんわかした人のイメージ。
私にそんな可愛らしい要素はまったくなくて、ふわふわよりもじめじめしてるんだけど……すみれちゃんもネットの人たちも口を揃えて天然だって言ってくる。
『もう、美紅ちゃんは危なっかしいんだから、私がついていなきゃだね!』
仕方ないなという空気を出しながらも嬉しさを隠しきれないすみれちゃんの顔が、ありありと思い出された。