彷徨う私は闇夜の花に囚われて
「僕がドキドキしていたのは気になってる人にガン見されていたからです。相手が年上だからとか関係ありません」
きっぱりと。
おどおどしていた姿は消え、迷いのない瞳で熱くこちらを見据えた。
今まで誰にも向けられたことのない高い温度。
慣れない熱に私の頬まで熱を帯びる。
後輩くんが顔を赤くした理由がやっとわかって、心臓がとくとくと速く小さく音を立てた。
「先輩……意識してくれたんですか?嬉しいです」
目尻を下げ、得意げに笑う後輩くん。
手元で減ることをやめたケーキよりも糖度の高い笑顔に、私は言葉を返せなくて。
意識した?
……ううん、そんなんじゃない。
初めてのことにちょっぴりドキドキしちゃっただけで、惹かれてなんかない。
私はもう恋をしないって決めたんだもん。
男の子はなにを考えているのか全然わからないから。
私には理解できない生き物だから。
そういうのとは距離を取った方がいいんだって学んだはずだもの。