彷徨う私は闇夜の花に囚われて
戻れない過去
私と樹くんは“腐れ縁”ってやつだった。
家が近くて幼稚園、小学校、中学校と十年以上も同じところで学び育った。
特に親しくしていたわけじゃないから幼馴染とはまた違う。
クラスだって同じになったのはたった3回だけで喋ることもほとんどなかった。
樹くんに関する情報を人より多く持っていただけ。
特別な感情はなく、樹くんに対する感情なんてなんにもなかった。
それが変わったのは中学2年生の冬休み。
年明けに市立の図書館へ立ち寄ったときのことだった。
来年の受験勉強のためにも、自習室の環境でも見ておこうと部屋を覗いた。
すると、そこには姿勢正しく参考書とノートに向き合っている樹くんがいて。
次の日もその次の日も。
冬休みが終わるまで毎日彼を見つけた。
私が息抜きに分厚い本を読み終わって部屋を覗いたとき、変わらない姿勢でノートにペンを滑らせ続ける姿とか。
机の上にはスマホがなく耳にイヤホンをしていないところとか。
そういうところが、なんとなくいいなって好感を持てて。