彷徨う私は闇夜の花に囚われて



初めて唇を落とされた場所で、私たちは再び視線を交わす。


込められている想いは気のせいだと思いたいモノ。


気のせいじゃないといけないモノ。


だって私たちは、もう……。


「俺はまだ美紅のことが―――」


「―――聞きたくない!」


……なんで、昔欲しかった言葉を言おうとするの?


今更遅いよ。もう、戻れないんだよ。


また裏切られるんじゃないかって。


そもそも樹くんは私のこと好きじゃないんじゃないかって。


何度も疑って、自分を責めて。


どうやったって自分の気持ちは思い通りにいかない。


そんな苦しいだけの道を二度と歩みたくないの。


「私は嫌い。大っ嫌い」


嫌いになれたらどんなに楽か。早く嫌いになりたいのに。


樹くんの反応が怖くて。私の嘘がバレてしまいそうでそれを隠したくて。


自分の願望を、鋭い言葉を。


俯いたまま地面に向かって放った。


声が震えたのが自分でもわかる。


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