彷徨う私は闇夜の花に囚われて
あぁ、ダメだ。こんなんじゃ私の未練は筒抜けだ。
こんなんだから、きっと彼の友達も扱いやすい女だって思って、それで昔あんなことを……
「……それでも俺は」
私の思考が激しく乱れる中、樹くんが私たちの距離を埋めようと近づく。
伸びてくる影が地面を這い、私の影と重なりかけて。でも、
「触らないで!」
私に触れようとした大きなそれを、私は思いきり払いのける。
感情と同じく手も大幅にぶれ、手首が彼の腕にぶつかった。
がつっと骨が軋む音がした気がしたけれど、身体の真ん中の痛みに比べたらどうってことない。
治らない痛みに比べたら数日で治る痛みなんて些細なもの。
早く、消えてよ。
なにもかも。私の前から、中から。
名残さえも残さずに消えてしまえばいいのに。
真っ黒に染まっていく心を癒すように、夜風に吹かれてどこかからやってきた淡いピンクがひらりひらりと舞い落ちる。