彷徨う私は闇夜の花に囚われて
加速する依存
「ただいま……」
呼吸を整えて玄関の扉を開き、家にいるであろうお母さんに帰宅を告げる。
小さい頃は返事があったけど、いつからかコミュニケーションはなくなった。
最後に笑顔で迎えてくれたのがいつだったのかは覚えていない。
手洗いを終えてリビングに入るとそこには珍しく妹である愛莉がいて、お母さんとお菓子を摘まみながら談笑をしていた。
……私には夕飯前にお菓子を食べるなって目をとがらせて言うのにね。
「ただいま」
もう一度、今度も聞こえるように声を張る。
だけど、二人の談笑が止むことはなくて……愛莉は一瞬こちらを気にするように笑うのを止めたけど、それだけだった。
返ってこないとわかっていながらも声を出すのは、自分がここにいるとわかってほしいから。
それでも定番の4文字は返ってこないし、視線すらもこちらにはくれない。