彷徨う私は闇夜の花に囚われて
「……はい。紅バラさんに怒られちゃいそうなので、今日の雑談は30分でやめることにします」
紅バラさんのコメント通りに私が宣言すると、たちまちコメント欄は嘆く声で埋め尽くされた。
中には紅バラさんへの文句もあって、心臓が大きくビクつく。
どうしよう……また私のせいで紅バラさんが悪者になっちゃう。
一人焦る私だったけど、紅バラさんは不穏な流れを断ち切るように、
『話、聞かせて』
と一言。
紅バラさんはいつだってそう。
私がコメント欄を見ておろおろしていると、心情を察したように流れを変えてくれる。
今だって私が困っているのに気づいてくれた。
紅バラさんは一人悪役になってでも私の最善を選ぶ、そんな思いやりのある人。
ちなみに、読み方が“べにばら”じゃなくて“くばら”だと知ったのは配信を始めてからのこと。
あとは男の子で同じ学年だということ……つまり、紅バラさんが男子高校生だってことを知っている。
それ以外のことは謎に包まれたまま。
どのあたりに住んでいるのかも、どんな声をしているのかも知らない。
顔や本名も当然知らない。
……もっと仲良くなって、いつか紅バラさんのことを知ることができたらいいな。
最近は特にそんなことを考えるようになっていた。