彷徨う私は闇夜の花に囚われて
変えられる心
“二人だけの世界を部屋のノックの音で邪魔されたくない”
そんな思いから耳に埋め込んだイヤホン。
そこから伸びる長い桃色を、意味もなく指先で弄ぶ。
無音の、二人だけを感じられる空間に浸っていたいのに、居心地が良すぎるのもなんだか怖いからと意識を外に向けてしまう……私はそういう矛盾ばかりの人間。
これから先も変わらないんだろうな……。
「ふぁ……」
不意に、口から無防備な声が、目からじわっと生理的な涙が漏れ出た。
ぼんやり考え事をしていると、ゆらゆらと眠気が近づいてくる。
画面の右上を確認すると時刻は22時を過ぎていて、良い子はもう寝る頃で。
「紅バラさん、寝ちゃいましたか……?」
『どういたしまして』から更新されることのないチャット画面に、眠気と戦いながら普段よりも高い声で問いかけた。
そもそも、私が声をかける時間が遅めの時間だったから良くなかったんだよね。