彷徨う私は闇夜の花に囚われて



「なんでなのか知りたい?」

「知りたい、です」


もしかして……なんて。


率直に気持ちを伝えてくれる紅バラさんなら“男の子”でも信じられるような気がする。


でも、関係を変えてしまったら、壊れてしまったときに元には戻れなくなりそうで。


聞きたいような、聞きたくないような……。


最近いろいろあって人の秘めた心に敏感になった私は、落ち着かない気持ちで紅バラさんの言葉を待つ。


子どもが10秒数えるくらいの時間が経ち、私がこくりと小さく喉を鳴らしたとき。


「……その前にましろも男の子が苦手な理由、教えてくれる?」


くっきりと輪郭を持っていたはずの声が、線を失ったように曖昧に空気を伝った。


ずっと聞きたかったことをようやく口にして、だけど躊躇いがあるからはっきりとは聞けない。そんな感じ。


交換条件を出された、とは思わなくて。


私も逆の立場だったらすごく気になってたと思うから。


むしろ、ここまで待ってくれていたことがありがたい。


それに、私を大事にしてくれる紅バラさんが知りたいと言うのなら、私は暗い過去だって喜んで話せる。


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