彷徨う私は闇夜の花に囚われて
“男の子”は簡単にそういうことを言っちゃうんだって。言えるんだって。
理解できなかった。したくなかった。
別の生き物だとすら思えて……苦手になってしまったの。
「彼とは受験勉強を理由にして別れました。あの日聞いたことを口にしたら、どうしても泣いてしまいそうでしたし……彼の前で泣いたら、自分がもっと惨めになるってわかっていたので」
しんと重く固まる空気。
それから一拍して、
「……そういうことだったのか」
紅バラさんは腑に落ちたような声を出した。
何気ない言い回しに、私はほんの少しの違和感を覚える。
「“そういうことだった”……?“そんなことがあったんだ”じゃなくてですか?」
「あ、あぁ、ごめん。言葉の綾だから気にしないで。それより……ましろは相当傷ついたよね。きっと、すごく辛かったよね」
紅バラさんは労わるような声を出した。
その声を聞くと、生まれた小さな違和感はすぐに消え去って。
代わりに当時の切ない感情が押し寄せてくる。