彷徨う私は闇夜の花に囚われて
いつまで経っても……紅バラさんと話しているときでさえ顔を出す、棘のような未練。
自分では消すことのできない曇り。
決別したつもりなのに、過去に囚われたままの自分に嫌気が差す。
「……そうですね。思い返してみれば、彼に一度も好きって言われたことなかったんです。私が想いを伝えたときも“俺も”とすら言ってもらえませんでした」
「……っ!」
樹くんのあまりの非道っぷりに紅バラさんの息をのむ声が聞こえた。
たぶん私に慰めの言葉をかけようと「それは……」と意味をなさない言葉が宙を彷徨い、しかし言葉は見つからなかったらしく、やがて沈黙した。
……そうだね。他の人からしたらそういう反応になっちゃうよね。
すみれちゃんも最初聞いたときは息をのんで、その次に怒り心頭って感じだったし……。
私はもうただただ悲しみしか残っていなかったけれど。
「“男の子”って一括りにしちゃうのはよくないと自分でもわかってはいるんです。でも、どうしても嫌煙しちゃって……」