彷徨う私は闇夜の花に囚われて
そして、そこで初めて自分の本心に気づく。
……そっか。私は樹くんとのことを忘れたくなかったんだ。
どんなに辛くても、苦しくても。
両手で包み込んであげたかった淡い想い。
初めてでわからないことだらけで、隣を歩くだけでも照れくさくて。
樹くんに近づく女の子に醜い感情を抱いて、初めての感情に困惑したことだってあった。
全部が新鮮で、幸せで、残酷で。
忘れられるわけがなかったんだ……。
だからこそ、それを“上書きさせて”と言ってくれる紅バラさんは、私以上に私のことを理解してくれていて。
「ましろのことが好き。俺と付き合ってほしい」
……そんな人のことをどうしたら拒めるというんだろう?
私の男の子が苦手な理由を聞いてもなお、付き合ってほしいだなんて。
そんなの、馬鹿な私でも想いの深さがわかってしまう。
拒む理由がない。
惹かれない理由もない。
「不安になんてさせない。俺のことを信じてほしい」
最後のダメ押しの一言。
変化に怯えて先へ進もうとしない自分が馬鹿馬鹿しく思えてきた。