彷徨う私は闇夜の花に囚われて
紅バラさんはとっくに私の中で特別な存在になっていて、応えないなんて選択があるわけもないのにね。
「……紅バラさんを信じます」
昔とは違う。相手の気持ちを確信した上での了承。
同じ過ちを二度と繰り返すことはない。
私は今度こそ一番大切な人と分かり合えるんだ。
関係が変わる合図に紅バラさんはわかりやすく気持ちを昂らせて、
「ありがとうっ!絶対にましろの期待を裏切らない。約束する。幸せにしてみせる」
私が安心する言葉をいくつもくれた。
幸福と誠実さを纏った声は心地よく、それでいて少しくすぐったい。
胸の中にあった想いが、明確に恋として膨らみ始めているのを感じた。
安心したら一気に眠気が襲い掛かってきて、私はベッドの上で横になりながらぼんやりと窓の外に目を向ける。
靄に包まれつつも煌々しい光が存在感を放っていて。
朧気に浮かぶ春の月が、ようやく一歩を踏み出した私を優しく見守ってくれているようだった。