彷徨う私は闇夜の花に囚われて



「……え、美紅ちゃん泣いてるの!?」

「泣いて、る……?」


注文を終えてこちらに向き直ったすみれちゃんが驚きの声を上げた。


すみれちゃんが言っていることにピンと来ていない私の語尾は疑問形になる。


私の目を長いこと見つめて確認したすみれちゃんは、やがてほっと息をついた。


「ぎりぎり泣いてはないね!でも、目がすごくうるうるしてるよ!」


ほっぺたを触ると濡れた感じは伝わってこなくて、だけど確かに視界はぼやけている。


悲しいことなんて起きていない。


それなのに感極まって雫が零れてきそうなのは……すみれちゃんと仲直りできたのが嬉しいからなんだ。


久しぶりにこうしてお気に入りのカフェに来て向かい合う。


何気ないことがこんなにも特別に感じられるって不思議だね。


「美紅ちゃんがそんな風になるの、珍しい。どうかした……?」


慌てふためきながらも私の隣へ移動してきて頭を撫でてくれるすみれちゃん。


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