彷徨う私は闇夜の花に囚われて
かと言って、すみれちゃん自身が私をいじめてくるとか、危害を加えてくるとか。
そういったことはないから、わからなくても大して気にしていないんだけどね。
少し変わったすみれちゃんとは昔から仲良く楽しく過ごしている。
頬を緩ませたすみれちゃんの話に相槌を打っていると……
「―――あ、樹くんが来たよ!」
「今日も顔の調子良すぎ!マジ目の保養~!!」
「なんか不機嫌っぽい気もするけど、それはそれでかっこいいな……」
ふと、冬の匂いが溶け込んだ清々しい朝の空気を乱す、黄色い声たち。
いわゆるスクールカースト上位層の女子たちが、廊下側の窓から身を乗り出してざわついている。
彼女たちが幸せオーラを放っている一方で。
……私は話題の中心にいる男の子の名前を耳にして身体を強張らせた。
「美紅ちゃん!私の話に集中してよ!あんなやつのことなんて考えなくていいんだからね!」
「……わかった。考えないようにする」
「そうそう、美紅ちゃんは私のことだけ考えていればいいんだよー!」
「うん。すみれちゃん、ありがとう」
「どういたしまして!美紅ちゃんは私と幸せになるんだ。誰にも邪魔させない……」