彷徨う私は闇夜の花に囚われて



とりあえず、マイナスの方にしか考えが進まない今は一緒にいない方がいいから、またね。


最後の3文字だけぼそりと呟き、すみれちゃんに背を向ける。


次の瞬間。いつかのような寒気を背中に感じた。


「邪魔だなぁ……」


……これもいつかと同じ温度のない低い声。


どんな表情を浮かべているのかは考えたくない。


後ろから聞こえた声に振り返る勇気がなかった私は、なにがと聞き返すこともなく足早に店の出口へと向かった。



◇ ◇ ◇



【ツバキside】



「―――私ね、紅バラさんと付き合うことになったの」


とある日の夜。


僅かに照れを滲ませながら報告してきたのは、ネットで出会った僕の想い人。


喜びを抑えながら冷静になろうと努める彼女の声からは幸せそうな雰囲気が伝わってきて。


「そうなんだ、おめでとう!」


祝福する以外の選択はなかった。


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