冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
 結局、有島家にいた時間の半分くらいを結婚式の相談に費やした。夕刻に晴臣と一緒に家を出た蝶子は彼にぺこりと頭をさげた。

「すみません、思いきりはしゃいじゃって」

 百合と結婚式の話をするのが本当に楽しく、晴臣と高志をすっかり置き去りにしてしまっていたのだ。晴臣は苦笑しながら返す。

「いや、はしゃいでいたのはうちの母親だ。付き合わせて悪かったな」

 蝶子はすぐに首を横に振る。

「いえいえ。すっごく楽しかったです」

 早速、来週末にも百合とドレスの見学にいく約束をしていた。

「嫁姑が仲よくしてくれるのはありがたいが……守るだの頼ってくれだの、まるで俺が君を不幸にするかのような言い草だったな」

 晴臣のやや拗ねたような顔に蝶子はくすりと笑う。でも、晴臣だけでも頼もしいのに百合まで味方してくれるとあれば、蝶子はどうあっても幸せになれそうだ。彼にそう言うと、晴臣はくしゃりと笑顔になる。

「そうか。君が安心できるなら、なによりだ」

 ふたりは有島家からの帰りに役所に立ち寄り、婚姻届を提出した。

「これで俺たちは正式に夫婦だ」
「はい! 末永くよろしくお願いします」

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