冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
 結婚式は安定期である秋頃に少人数で開催することに決めた。本来なら有島家は招待客が大勢いるのだろうが、家族を呼べない蝶子を気遣って家族だけにすると言ってくれている。蝶子のほうは羽柴と真琴と桃子を呼ぶつもりだ。

「例の翻訳家の先生も呼んだらどうだ? 君が俺のものだと見せつけてやりたいし」

 本気とも冗談ともつかないようなことを晴臣は言う。沙良のところのアルバイト期間はそろそろ終了だ。だが、二巻の発売が決まればまた声をかけてくれると彼は言っていた。

「一応、聞いてはみますね」

 蝶子は交友関係が狭いので、結婚式に呼べるような人間はもう思いつかない。

「七緒ちゃん……は来るわけないか」

 七緒は蝶子を嫌っているのだろうが、蝶子は彼女を憎みきれない気持ちがある。ワガママで自由奔放な彼女は、ある意味で蝶子の憧れだったからだ。
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