冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
すっかり蚊帳の外になっていた七緒が戸惑いながら、言葉を発した。
「え……待ってよ。ママが不倫してたなんて、私は全然知らないし、本当のことなの?」
七緒の問いかけに公平も紀香もだんまりを決め込む。晴臣は公平を見据えてはっきりと宣言した。
「あなたは、自らの失態で二度も会社を危機に追いこんだんですよ。そんな人間がトップに立つ会社との取引は考え直すよう病院に提言します。もちろん一切の援助は期待しないでいただきたい」
公平は大きく肩を落としてうなだれる。うつろな瞳は、もうなにも見てはいなかった。今度は紀香に視線を移しながら、晴臣は言う。
「それから、あなたの過去になにがあったのかは知りませんが、その醜くゆがみまくった鬱憤をなんの関係もない蝶子で晴らそうとしないでください。あなたが彼女にしてきたことは、虐待そのものだ」
紀香にもまた、彼女しか知りえない闇があり、おそらく蝶子を前にするとそれを思い出してしまうのだろう。紀香が蝶子に抱いている感情は憎しみではなく、恐れに近いものに思える。だが、彼女の過去に蝶子が責めを負う道理はない。
晴臣はすっと立ちあがると、ぶるぶると震えている紀香を見おろして冷たく告げる。
「俺の妻に二度と近づくな。警告で済むのは今回かぎりだ」
「え……待ってよ。ママが不倫してたなんて、私は全然知らないし、本当のことなの?」
七緒の問いかけに公平も紀香もだんまりを決め込む。晴臣は公平を見据えてはっきりと宣言した。
「あなたは、自らの失態で二度も会社を危機に追いこんだんですよ。そんな人間がトップに立つ会社との取引は考え直すよう病院に提言します。もちろん一切の援助は期待しないでいただきたい」
公平は大きく肩を落としてうなだれる。うつろな瞳は、もうなにも見てはいなかった。今度は紀香に視線を移しながら、晴臣は言う。
「それから、あなたの過去になにがあったのかは知りませんが、その醜くゆがみまくった鬱憤をなんの関係もない蝶子で晴らそうとしないでください。あなたが彼女にしてきたことは、虐待そのものだ」
紀香にもまた、彼女しか知りえない闇があり、おそらく蝶子を前にするとそれを思い出してしまうのだろう。紀香が蝶子に抱いている感情は憎しみではなく、恐れに近いものに思える。だが、彼女の過去に蝶子が責めを負う道理はない。
晴臣はすっと立ちあがると、ぶるぶると震えている紀香を見おろして冷たく告げる。
「俺の妻に二度と近づくな。警告で済むのは今回かぎりだ」