冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
晴臣は蝶子と小夜子に「帰ろう」と声をかけた。この家にもう用はない、二度と訪れることはないだろう。ふたりが立ちあがると、七緒が弱々しい声をあげた。
「私は……どうしたらいいのよ。こんなめちゃくちゃになった家で……」
「七緒ちゃ――」
思いきり彼女に同情している蝶子を晴臣は制する。胸ポケットから自分の名刺を取り出して彼女に手渡した。
「君が本気で勉学のために大学に通い続けたいというなら、サポートする。家と仕事を提供するよ」
学費分は蝶子の渡した金でまかなえるだろうが、完全に実家を頼れないとなると生活費が厳しいだろう。七緒に毎月決まった額を渡すことは簡単だが……彼女は少し苦労を知ったほうがいいように思う。
小夜子は『結婚式には必ず出席する』と約束し、房総の職場へ帰っていった。
ふたりきりの寝室で、蝶子は甘えるように晴臣に身体を寄せる。晴臣は彼女の腰に手を回しながら、聞く。
「どうした?」
「晴臣さん、本当にありがとうございます。七緒ちゃんのことも、お母さんのことも……全部、私の気持ちを尊重してくれたんですよね」
晴臣は苦笑する。彼女たちへの対応が百パーセント晴臣の本意ではないことに、どうやら蝶子は気がついていたようだ。
「私は……どうしたらいいのよ。こんなめちゃくちゃになった家で……」
「七緒ちゃ――」
思いきり彼女に同情している蝶子を晴臣は制する。胸ポケットから自分の名刺を取り出して彼女に手渡した。
「君が本気で勉学のために大学に通い続けたいというなら、サポートする。家と仕事を提供するよ」
学費分は蝶子の渡した金でまかなえるだろうが、完全に実家を頼れないとなると生活費が厳しいだろう。七緒に毎月決まった額を渡すことは簡単だが……彼女は少し苦労を知ったほうがいいように思う。
小夜子は『結婚式には必ず出席する』と約束し、房総の職場へ帰っていった。
ふたりきりの寝室で、蝶子は甘えるように晴臣に身体を寄せる。晴臣は彼女の腰に手を回しながら、聞く。
「どうした?」
「晴臣さん、本当にありがとうございます。七緒ちゃんのことも、お母さんのことも……全部、私の気持ちを尊重してくれたんですよね」
晴臣は苦笑する。彼女たちへの対応が百パーセント晴臣の本意ではないことに、どうやら蝶子は気がついていたようだ。